ラ・フォンテーヌの『寓話』、「長靴をはいた猫」「シンデレラ」などを集めたペローの『童話集』、ヴェルヌの冒険物語やマロの『家なき子』など、フランスの児童書は、日本はもちろん世界中で親しまれています。そのフランスの絵本史に、大きな一歩をしるしたのが「カストール文庫」です。20世紀の初頭、今日でいう「絵本」が誕生する中、教育者のポール・フォシェは、ナタリー・パランやロジャンコフスキーといったロシア出身の美術家たちと組み、美しいイラストと遊びながら学べる絵本のシリーズを生み出しました。フォシェが手がけた絵本は1931年から亡くなるまでの30年余りで330冊以上にのぼり、現在まで刊行されています。また、この「カストール文庫」が登場した1931年には、ジャン・ド・ブリュノフによる絵本『ぞうのババール』も出版されます。これは、妻が息子たちに話し聞かせていた子ぞうの冒険物語を元に描いた絵本で、見開きページ、明快な色彩、手書きの文字が印象的です。当時としては画期的な大きな判型で出版され、またたく間にミリオンセラーとなり、世界へ広まりました。本展ではこのような発展期の絵本と「遊ぶ」絵本の系譜を、日本初出展となる原画や貴重なデッサン、冊子など約350点で紹介し、フランスの絵本の魅力を解き明かします。