絵画、彫刻だけでなく様々なジャンルを超えて活動した岡本太郎。岡本は1951年東京国立博物館で「縄文土器」と出会い、翌年美術雑誌『みづゑ』に「四次元との対話─縄文土器論」を発表しました。岡本はこれまでの「美術」という枠にとらわれずに「縄文の美」を最初に発見したアーティストといえるのではないでしょうか。
岡本が生まれたのは、川崎市の中央に位置する高津。縄文土器が作られた時代、川崎は半分あまりが海の中でした。時を経て海岸線は徐々に後退し、また臨海部は幾度も埋め立てられ、川崎は海へと延びて発展していきました。工都とも呼ばれた川崎は、海・水際との関わりが深い都市であるといえるでしょう。
この展覧会では、岡本太郎のジャンルや枠を超えた力、多面性を継承しているアーティストである日比野克彦の様々な活動・ジャンルでの代表作を紹介するだけでなく、川崎と海の関わりをテーマに公開制作を行い、この作品を中心として展示空間が構成されます。
海・水際との関わりが深い「川崎」という都市の歴史を、縄文時代の土器や日比野の作品で表現の根源を問う実験的な展覧会です。
2011年3月11日、未曾有の大災害である東日本大震災により、改めて私たちは海・水際の持つ大きな力の恐ろしさと自然の脅威を知ることになりました。
東日本大震災では多くのアーティストが復興支援活動に関わりましたが、日比野克彦もいち早く復興支援活動を立ち上げた一人です。日比野はいつも「つくることが生きること」という考えのもと、自らの作品を作り、また様々なアートプロジェクトを立ち上げてきました。東日本大震災の復興支援として日比野が考えた「ハートマークビューイング」は、誰でもが知っていて、誰もが簡単に描ける「ハートマーク」の形の力で、参加者がそれぞれの思いを託し、気持ちの交流を目に見える形にしていくという参加型のプロジェクトです。
本展でも会期中に「ハートマークビューイング」プロジェクトが行われる予定です。また「岡本太郎現代芸術賞」の太郎賞を受賞した若いアーティストたちによる参加型ワークショップという形で、岡本太郎の精神を継承していく試みも行います。
本展への多くの方のご来館をお待ちしております。