奈良時代の三彩から、平安時代の緑釉陶器、猿投から各地へ展開した古代・中世の古窯の器、茶の湯の美意識が創出した桃山・江戸の茶陶、華麗な展開を見せる伊万里や鍋島の磁器、雅な仁清・乾山の京焼、そして木米や道八など江戸後期の名品まで、重要文化財4件を含む約130件の作品により、1200年にわたる日本陶磁の変遷を探ります。
日本では、各時代を通じて日本や朝鮮など海外の陶磁器に憧れの眼差しを注ぎ、それらを模倣してきましたが、それとともに日本独自の美意識と造形を育んできました。古代の奈良三彩は中国陶磁の模倣の典型ですが、室町末に至ると唐物(輸入陶磁)趣味を脱し、茶の湯の美意識によって、日本独自の茶陶を各地の窯で作るようになります。次いで伊万里焼も中国陶磁の模倣に始まり、やがて古九谷や鍋島など日本的な美の様式を産み出し、一方で輸出磁器はヨーロッパの王侯貴族をも魅了しました。今回は特に展示作品の半数に及ぶ伊万里磁器により、その成立から古九谷や鍋島も含む華麗な展開をご覧いただけます。
日本陶磁の数々に、その造形美と、そこに込められた日本人の憧れや美意識をご覧頂ければ幸いです。