≪東海道五拾三次≫は各図に狂歌師(きょうかし)らによる狂歌(きょうか)が添えられているため「狂歌入東海道(きょうかいりとうかいどう)」と通称されています。
東海道は起点日本橋から京都三条大橋を終点とします。本揃物では京都三条大橋のほかに大尾(だいび)として内裏(だいり)の図が加わり、通常の東海道五十三次揃物(そろいもの)より1図多い56点からなります。
本揃物(ほんそろいもの)は中判(ちゅうばん)サイズで当時のスタンダードな大判(おおばん)サイズ(現在のB4サイズ相当)の半分という小さいサイズの作品ですが、彫り、摺りともに繊細緻密(せんさいちみつ)に仕上げられ、彫師(ほりし)・摺師(すりし)の「匠(たくみ)の技」が光る作品です。
また広重が描く街道風景に添えられた狂歌は、縁語(えんご)や掛(かけ)(懸)詞(ことば)を用いて各宿場の宿場名や宿場付近の名跡などを詠み、機知(きち)や滑稽(こっけい)に富んでいます。
広重の情緒豊かな風景と江戸っ子の洒落(しゃれ)がぴりりと効いた狂歌が織りなす東海道の風情(ふぜい)をお楽しみください。