フランス文学者の鹿島茂氏は、その執筆活動のみならず膨大な古書コレクションを所有するコレクターとしても知られています。練馬区立美術館では、昨年よりその愛蔵コレクションを連続して紹介する展覧会を開催、第1回目は19世紀フランスを代表する挿絵画家、J.J.グランヴィル(J.J.Grandville, 1803-1847)を取り上げました。第2回にあたる本展では、アール・デコ期を中心に活躍した共にフランス、ナント出身の2人の画家―ジョルジュ・バルビエ(George Barbier, 1882-1932)とジャン=エミール・ラブルール(Jean-Emile Laboureur, 1877-1943)―を紹介します。
バルビエは、当時の代表的なモード雑誌の挿絵や多くの豪華挿絵本のみならず、映画や舞台の衣装デザインまでも手掛け、その活躍は挿絵画家の領域を飛び越えたものでした。最新のモードを纏った生き生きとした女性たちが印象的な『ガゼット・デュ・ボン・トン―芸術、モード、および流行』(1912-25)、バレエ・リュス(ロシア・バレエ)のパリ公演から受けた衝撃そのままに制作された『ヴァーツラフ・ニジンスキーのダンスを描いたジョルジュ・バルビエのデッサン』(1913)やギリシア趣味が結集した最高傑作とも言える『ビリチスの歌』(1922)など、しなやかな肢体表現と大胆な構図と躍動感、そして美しい色彩、バルビエの作品世界は現在もなお多くのファンを惹きつけています。
ラブルールは、バルビエのような色彩豊かな画面とは異なり、シャープな線描によって構成された多くの版画作品を制作しました。当初、木版画を学んでいましたが、1916年頃から銅版画の技法を取得します。これによって1913年頃から見られるキュビスム的作風が生かされた、よりシャープな表現が可能となりました。1920年代に入ると、『百貨店風景』(1921)のようなモダンな都市風景の描写や、『ドリアン・グレイの肖像』(1928)など多くの文学作品の挿絵を手掛けます。モダン都市の情景をスピーディー且つファッショナブルなタッチで捉え、人気を博した版画家であり、挿絵画絵でした。
バルビエとラブルール、同時代を生きた2人の異なるスタイルの作品世界をご堪能ください