中村勝治郎(1866-1922)は現代の奈良県奈良市に生まれました。京都で洋画家・山内愚僊に絵の手ほどきを受けた後、フランス留学から帰国間もない黒田清輝と知り合ったことから、美術団体「白馬会」の結成に参加した同展で出品を重ねる一方、東京美術学校で黒田の補佐を務めるなど、近代日本美術史に確かな足跡を残しました。とりわけ黒田との親しい間柄は黒田の書簡や日記を通じて知られており、それらは当時の美術界の動向を伝える貴重な証言ともなっています。
しかしながら国内外で活躍する同時代の画家たちの中にあって、美術教育の現場で終始したかのように見える中村の存在は画壇で脚光を浴びることもなく、また展覧会出品作をはじめとする代表作も多くは残されていないなどから、これまでその人となりはもとより作品についてもまとまって紹介される機会はありませんでした。
中村勝治郎像 中村勝治郎 1902年 油彩・板
初の回顧展となる本展は、中村の油彩画約80点をはじめ、水彩画や鉛筆画、美術資料などを展覧しその画業を
顕彰いたします。