2010年1月12日、カリブ海に浮かぶ美しい島国ハイチ共和国を襲った未曾有の大地震は首都ポルトー・プランスを中心に人々の生活のみならず芸術作品にも壊滅的な被害をもたらし、人々の生活支援とともに絵画作品の修復が続けられています。
1492年にコロンブスが到達して以来、様々な国の支配下におかれたハイチは1804年にフランスから独立して世界初の黒人共和国として誕生しましたが、フランス植民地時代には人々の間に芸術に親しむ環境が醸成されて、やがて国民全体に広がっていきました。
美術学校も設立されてフランス人仕込みの正式な絵の描き方を学んだ人々は、ハイチの美しい自然や素朴な民衆の生活をモチーフにした“ハイチ絵画”を誕生させました。
アフリカの原住民であったハイチの人々の素朴で自然を好む優しい国民性は、“ハイチ絵画”に優しい人間愛と自然への親しみに満ちた詩的な抒情を醸し出しています。
また、アンドレ・マルローが「最高の絵描き民族」として評価し、アンドレ・ブルトンにも注目された“ハイチ絵画”はアメリカ人芸術家デーヴィット・ピーターズの尽力で各国に紹介され、世界の一流美術館のコレクションにも加わっています。
本展は、芸術的評価の高い「ハイチ絵画」の紹介を通してハイチの被災者やハイチ絵画修復への支援を呼びかけるため、緊急に計画された展覧会であります。