私たちの生活において高度な情報化と急速な技術革新が進むなか、手仕事の技は人々の心を惹きつけ、美に対する完成を刺激して、近年再び注目されています。そこで、このたび華鴒大塚美術館では、倉敷で生まれ、今や日本を代表するガラス工芸となる倉敷ガラスを取り上げ、「手仕事の技と美 倉敷ガラス」展を開催いたします。
一つ一つを丁寧に口吹きで制作する倉敷ガラス。それは今から46年前、一人の職人の手によって生まれたガラスのコップから始まりました。真っ直ぐ立たないもの、形の歪んだものなどコップの大きさや形はさまざまでしたが、無機質な日用品としてのガラス製品があふれるなかで、それを手にした人たちはたちまち虜になりました。そのガラスコップを作ったのが、当時クリスマスツリーの飾り職人だった小谷真三さんです。 手作りにこだわる小谷さんは、ガラス製作の全ての工程を一人で手がけます。そうして生まれたガラスには、独特の色合いと風合いがあり、手作りだからこその温もりややわらかさ、ひとつひとつの表情の異なる造形が魅力です。 その小谷さんの仕事のモットーは「使えば使うほど愛されるものを作ること」だと言います。今ではその言葉通り小谷さんのガラスに魅了された人が、岡山県内のみならず全国に広がっています。
今回の倉敷ガラスは、小谷さんの生まれた井原市芳井の歴史民族資料館所蔵のものに、個人の愛蔵品も加え紹介いたします。是非この機会に、手や心に響く小谷真三さんの手仕事の技と美の結実「倉敷ガラス」の魅力をお楽しみください。