戦後間もなく写真家としての道を歩み始めた、秋山庄太郎(1920-2003)。女性の魅力を独特の感覚で引き出すポートレートで幅広い人気を博し、わが国写真界で最も注目される写真家となりました。表紙撮影を担当した週刊誌や月刊誌は売上部数を伸ばし、最盛期には手がけた定期刊行物は30誌に及んでいます。
一方、1960年の渡欧を契機に「花」の魅力に強く惹かれるようになり、1965年頃から没年に至るまで、ライフワークとして「花」の「美」の具現化に挑み続けました。スタジオでは、生け花の素養を活かしながら緻密な描写で「花」の造形美に迫り、屋外では、35mm一眼レフカメラの機動性を活かして、移ろいゆく自然の中に佇む「花」の一瞬の情緒美を捉えました。
こうした秋山写真芸術の集大成となったのが、晩年に取り組んだ「365日シリーズ」です。1990年の第1作《花-365日》から1997年の最終作《薔薇よ!Rose365》まで全6作に及ぶ同シリーズは、それぞれ「花」を主体に約365点の作品で構成され、いずれも大きな反響を呼びました。
本展では、この「365日シリーズ」の中から、1993年に発表された《花逍遙-366日》の全作品を一堂に展示。国内外で捉えた四季の「花」や「風景」作品を通じて、秋山が晩年に達した「美」の境地を紹介します。