ラリックの作品には、美しい女性像や自然の草花だけでなく、幾何学的な文様も数多く登場します。これらは1925年を頂点にヨーロッパを中心に流行した「アール・デコ」と呼ばれたスタイルをラリックが取り入れたものです。
その時代からさかのぼることおよそ100年、箱根畑宿では寄木細工が盛んに製作されるようになりました。色とりどりのさまざまな木々を組み合わせて作るその工芸品は、旅行く人々のおみやげ物として重宝され、後に明治時代に入ると、横浜の開港と共にヨーロッパへと渡って行きました。日本勢が出品した万国博で、ラリックが箱根寄木細工を眼にしたかどうかは定かではありませんが、文様の共通点を探ることで、アール・デコのルーツを寄木細工の文様にまで辿ることができるかもしれません。
今回は、ラリック作品と同時期に製作された明治時代の寄木から、次世代を担う現代の作品まで、“日本のアール・デコ”とも呼べる箱根寄木がラリックと出会います。ラリックと箱根寄木細工の競演をお楽しみください。