シュルレアリスムの奇才サルヴァドール・ダリ(1904~1989)。彼はフロイトの精神分析を用いた『偏執狂的批判的方法』によって幻想的な空間を写実的に描き出し、没後20年を経た現在でもその人気は衰えることがありません。
当館では、ダリが30歳頃に制作した2つの作品を収蔵しています。1つは1933年に制作した油彩画《三角形の時間》で、当時彼を支援していたグループ「ゾディアック」のメンバーのために描かれた作品です。そしてもう1つは、ピカソの勧めのもとにスキラ社から依頼され、1934年に出版した銅版画集《マルドロールの歌》。シュルレアリストたちに影響を与えた、ロートレアモン伯爵による同名の散文詩の挿絵として制作されたもので、ミレーの《晩鐘》から着想を得たものや、やわらかい時計、愛妻ガラなど、油彩画でもおなじみのモチーフが登場します。
非合理な世界を緻密に描写したダリの絵画は、ただそれだけでも興味をかきたてられますが、彼が残した文章と照らし合わせながら見てみると、想像もできなかったようなダリの世界が広がります。この展覧会では、上記の作品をダリの言葉や他の作品図版を参照しながらご覧いただき、摩訶不思議なダリの脳内探検をお楽しみいただきます。