写真家・柳下征史(1940- )の取材対象は茨城県内のワラ葺き、茅葺き民家です。1960年代初頭より撮り続けているのは、「ふるさと茨城」の原風景です。高度経済成長を経て世の中の合理化や近代化への流れによる茅葺き民家の減少を感じた柳下は、記録としてフィルムにおさめてきました。撮影はいつしかライフワークとなり、その数はおよそ700棟におよびます。残念なことにその内500棟近くが姿を消したといいます。撮影当初の作品から現在の作品まで、約120点の写真によって茨城の原風景をご覧いただきます。
向井潤吉の絵と柳下征史の写真の中にある《茅葺き民家》は、現在ではその多くが消滅してしまいました。自然が失われ、住環境が劇的に変化してしまった現在、昔あった懐かしい日本の原風景に思いを馳せていただく機会となれば幸いです。