山種美術館は、本年10月1日、渋谷区広尾に移転し、新美術館を開館する運びとなりました。
開館記念の特別展として、「速水御舟~日本画への挑戦~」を開催いたします。
大正から昭和を駆け抜けた日本画家・速水御舟。23歳で日本美術院同人に推挙され、横山大観や小林古径ら日本画家を始め、安井曽太郎、岸田劉生ら洋画家にも高く評価されてきました。御舟は、40年の短い生涯におよそ700余点の作品を残しましたが、その多くが所蔵家に秘蔵されて公開されることが少なかったため、「幻の画家」とも称されていました。しかし、当館が1976(昭和51)年に旧安宅コレクションの御舟作品103点を一括買い上げし、従来からの所蔵作品と併せて御舟コレクションが充実したことは大きなニュースとなりました。ちなみに、この一括購入で話題となった「特別展 速水御舟―その人と芸術―」では8万人を超える来館者がありました。
新美術館開館記念特別展では、当館所蔵の≪炎舞≫≪名樹散椿≫(重要文化財)を始めとする118点の御舟作品に加え、1930(昭和5)年の渡欧日記、本邦初公開となる未完の大作≪婦女群像≫(個人蔵)も展示します。これらの新出資料を通じて、40歳の若さで急逝した御舟が新たに目指していた方向性が明らかになることでしょう。
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。(中略)登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である」と語ったとおり、彼は常に挑戦者であろうとしました。その生涯を通じて、短いサイクルで次々と新しい試みに挑み続けたのです。本展では、山種コレクションの御舟作品をすべて展示し、皆様にいま一度、御舟作品の凄みを体感していただきたいと思っております。