第二次世界大戦の敗戦から20年、政府によって発表されていた所得倍増計画は、瞬く間に、その成果を示し、日本は驚異的な高度経済成長の真っ只中にありました。東京オリンピックを経て大阪万博の開催、私たちの生活はどんどん豊かになり、一方で、この時代は70年安保への反対運動が高まるなど、熱い政治の季節でもありました。そしてオイルショック後には、その熱気は冷め始め、経済も低迷し低成長時代を迎えます。本展覧会の背景となるのは、そんな時代です。
美術も時代に応じて熱い前衛的な動向が注目され、それまでの「絵画」や「彫刻」を否定した「反芸術」が登場しており、やがて色彩や図像が抑えられた、禁欲的な表現が拡がっていきます。このころ、色彩や図像・イメージの主流は「美術」より、出版やポスターなどグラフィック・アートやマンガといった、サブカルチャーにあったといえるのかもしれません。そこには、進歩した印刷技術の上に立って開花した、優れた才能の存在がありました。時代とともにあったビジュアルイメージをお楽しみいただきます。