私たち日本人は、かつてより、いくつかの条件がかなう所に、日常生活の世界とは異なる「異界」を感じとっていたようです。そして、そうした感覚は、様々な民俗事象として表れています。
たとえば、集落の境や辻には、中に悪いものが入ってこないように御札や大きなワラジなどを立てたり、家屋にも魔除けをしたりします。また、異界と感じられる所に向けて祈りをささげたり儀式をおこなったりします。さらには、河童や天狗など、具体的に異界にすむもの達を想定し、怖がったり、信仰したりもします。
このテーマ展は、日常生活の周辺で意識される異界を、栃木県内の事例を中心とした民俗事象を通して考えようとするものです。異界とは、いったい、どのような世界で、どこにあるのでしょう。なぜ、人々は異界を感じるようになったのでしょうか。
この展示をご覧になることで、異界について思いをめぐらせ、創り出した人々の心を読みとっていただけたらと思います。