20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエ(1887-1965)は、集合住宅や都市計画といった新しい理念の導入により、近代建築の基礎を築きました。細い柱郡に箱を乗せたようなサヴォア邸や、コンクリートを有機的なフォルムに仕上げたロンシャンの教会堂など斬新なデザインによる建築は、当時の建築界に一大センセーションを引き起こしたばかりでなく、今日活躍する建築家にも、今なお多大な影響を及ぼし続けています。 ところで、コルビュジエが建築家である一方、生涯を通して画家として活動していたことは一般に余り知られていません。彼は1920年代には画家オザンファンと共に「ピュリスム」絵画を提唱し、晩年に至るまで毎日数時間を画室で過ごし続けました。コルビュジエにとって、絵画は単なる気晴らしといったものではなく、彼が手掛けたあらゆる創作活動において核心的な役割を果たしたのです。「住居は住むための機械」という有名な言葉を残したコルビュジエですが、彼の建築からはそうした機能主義的な外観を越えて、どこか人間臭い温もりが感じられることがあります。それはこうした絵画制作により培われた人間存在に対する深い洞察があったからではないでしょうか。 本展では、コルビュジエが生涯にわたり制作した版画作品より、「モデュロール」「ミュージシャン」など代表作を中心に約25点を展示致します。どうぞご高覧下さい。