川上澄生(1895-1972)は青山学院高等科卒業後、カナダのヴィクトリア、アメリカのシアトル、アラスカで、約1年に及ぶ海外生活を送り、帰国後の1921年(大正10)、栃木県立宇都宮中学校(現・宇都宮高等学校)の英語教師となりました。教師生活のかたわら、当時、隆盛期を迎えていた創作版画の中心的な役割を担い、以後にわたり南蛮や文明開化といった異国情緒あふれるテーマを中心に、独自の画風を築いていきました。
自身の作品制作のかたわら、日常から商業にいたるまで多くのデザインを生み出し、家族や親しい人たちの装身具に絵を描くなど、日々の生活を豊かにすることを楽しみました。また、自著を始めとして多くの本や雑誌の装丁を手掛け、栃木県内外のお店のメニューや包装紙、ブックカバーのデザインなど、商業美術の分野でも活動しました。
本展では、日常に根ざした川上澄生のデザインを取り上げ「暮らしのデザイン」、「遊びのデザイン」、「本を彩るデザイン」、「記念品のデザイン」、「商業美術家として」という5つのテーマから、デザイナーとしての新たな一面を紹介します。