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Deal in Fantasy
Deal in Fantasy
糸川ゆりえ / 大久保 薫 / 戸田悠理 / 村田 啓
Venue
児玉画廊|天王洲
Period
2020年1月25日 ~ 2月29日
Exhibition Outline
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ignore your perspective53「Deal in Fantasy」 によせて
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作品を並べるということは、そこに響き合うものが見いだせるということであり、それと同時に、差異が顕わになるということでもある。横に並べられた作品を行き来しながらの鑑賞は、展示という一時的に組織された時間に許された贅沢な行為である。
糸川ゆりえの作品には、明らかにある種の詩情が起動している。「文章を読む」行為には、そこに本質的に孤独さが畳み込まれている。言葉というメディアが本質的にリニアなものであるが故に、そこで語られる物事以前の「人称そのものの孤独」のような感覚がある。文学がもつ詩情とはそのようなものだと思うが、糸川の絵画は、構図や筆致によって、その詩情を捉えることに成功しているように見える。薄く重ねられる筆触は、物理的な不確かさによって、霧の奥を捉えていくような視線の力動性を作り出す。一方で、平板な空間は、空間の深度を限定することによって、空間そのものを物語の舞台とする。
大久保薫は、一貫して男性の肉体に関心をもって作品を描き続けている。とはいえ作品を見るに当たっては、モチーフへの関心を共有しようとするよりも、むしろ作家がもつ一貫した関心から、いかに多様な画面の表情を引き出し得ているのかに注目すべきだろう。その視点で捉え直してみれば、重ね合わされる絵の具の表情の複雑さに驚かされるはずだ。
過去作には、フェンスのようなモチーフが画面の手前にあり、奥の人物像を遮っている。それによって、人物の筆致は分断されてしまうが、作家はそうやって、わざと画面を「描きづらく」している。作品制作にあえて抵抗感を持ち込むことによって、ストレートにイメージが組み上げられてしまう事態に抗っているようだ。制作過程においては、エスキースが最終的な画面よりも大きなものになることまであるという。大久保の作品がもつ表情の複雑さは、そのような「抵抗」からもたらされる表情である。
戸田悠理の作品は、ぱっと見て「現代的」だ。さて、この「現代的」とは何か目で追ってみれば、画面全体の彩度の高いグラデーションや、登場する人物たちのファッションに注目させるような、力の抜けたポージングによってもたらされていることが分かる。加えて、記号化された表象が上書きされている人物たちのイメージが、インターネットから引用されたものだと知れば、なおのこと「現代性」の出自について深く理解できるだろう。
村田啓は、本展では唯一の写真の作家である。複数のイメージがぼやけつつ重なり合う様子は、コンピュータによるデジタルコラージュではない。イメージが浮かび上がりつつ重なり合う村田の画面は、はっきりとした断面をもった断片が組み合わせられるコラージュの画面とは異なった情感を画面にもたらす。鑑賞者は複数の画面がもつそれぞれの被写界深度の関わりを探りながら、画面を見つめることになる。
横に異なる作者の作品が並べられることは、作家にとっては時に試練でもあろうが、我儘な鑑賞者たる我々にとっては、祝福すべき時間だ。そしてそれは「作品にとって」も喜ばしい時間なのである。
- Closing Days
- 日・月・祝休廊
- Opening Hours
- 11:00 ~ 18:00
- 11:00~18:00 (火~木、土) / 11:00~20:00 (金)
Access Information
児玉画廊|天王洲 コダマガロウ | テンノウズ
- Address
-
〒140-0002
品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F - Website
- https://kodamagallery.com/
Created Date:2020.2.5