ID:81171

Return ラウル・デ・カイザー Return Raoul De Keyser

会場

ワコウ・ワークス・オブ・アート

WAKO WORKS OF ART

会期

2025.11.8 - 12.20

展覧会概要

Return ラウル・デ・カイザー Return ラウル・デ・カイザー

Return Raoul De Keyser

ワコウ・ワークス・オブ・アートはこのたび、11月8日(土)より、ラウル・デ・カイザーの個展「Return」を開催いたします。

当画廊での3回目の個展となる今回、マーティン・ゲルマンをキュレーターに迎え、作家が82歳で逝去する直前の2012年春から夏にかけて完成された15点を中心に展示します。

画家が一生を過ごしたフランドル低地、北海にほど近いその一帯の平らな風景、身の回りの品々、キャンバス自体の分割、さらに色彩や筆致、ジェスチャーをめぐる問いかけ。今展で展示するのは、50年にわたって彼の制作を形作ってきたこれらの主題へと立ち返る絵画作品です。2015年のロンドンでの個展で初めて紹介されたこの作品群の一部に、今回、初期の作品を加えて展示します。

今回展示される作品は、アーティストの体力が尽きる直前に実現した意識的かつ綿密な構築によって制作されたシリーズとして、彼の制作活動全体を読み解く「ソースコード」の一部となっているといえます。たとえば一本の簡素な垂直線や海景であったり、画家あるいはひとりの老人としてすぐ手に取れる場所にある身近な物などが描かれた画面上では、物質としての絵画への意識が触覚的、可視的に示されており、彼の作品に特徴的な控えめかつ茶目っ気のあるユーモアを前にも増してみることができます。この作品群に備わる控えめな気品はキャンバスや塗膜の物質的な脆さと呼応し、美と崩壊の境界面を探り続けています。
奇妙に歪んだ吊り金具が付いている作品や、不自然なほど大きくキャンバス地を折り返した作品、壁からわずかに離すことで重力を強調しているような作品、ワインの木箱の裏に描かれた作品など、まるで圧縮された短編小説のようなそれぞれの作品によって、デ・カイザーはいまいちど、芸術と人生において自身が成し得たことを静かに見つめ直しています。

デ・カイザーの静謐な絵画は、抽象と具象の中間に存在するのみならず、さらにその先を指し示しています。画面を構成するシンプルな形と筆跡はことさらに物語を語ることなく空間と形態を提示し、最小限の語彙が生み出す意外なほどの視覚的強度によって、時間をかければかけるほど手応えの深みが増す鑑賞体験がもたらされます。それぞれの絵画が物質であるという事実を超え、新たな位相へと向かいながら、絵画に何ができるかを探究しているのです。シンプルに見えながらも、実際には長い時間をかけて熟成された考察によって生み出された彼の作品は、1960年代から2010年代までのキャリア全体を通して、その時々の潮流に反応しつつも、独自の絵画的言語に一貫して忠実であり続けてきました。

展覧会タイトル「Return」は、ラウル・デ・カイザーの制作スタイルそのものを示しています。キャリア全体を通じて画家は繰り返し過去の主題に立ち返り、それらを更新して新たな絵画に適用するということを繰り返していました。また、この言葉は「Replay」や「Retour」といった過去の作品タイトルとも響き合い、私たちの未来へのまなざしが常に過去とつながっていることを示唆しています。「回帰とは新たな旅でもある」という彼の言葉はよく知られています。構想段階のある時点において今回の展示作品を含む一群を「Tokyo Wall」と彼が名付けたという事実は、今展に特別な意味を与えています。今回の部分展示においては、2000年代初頭の作品を少数加え、抽象、具象、物体としての絵画、それら三者のあいだに広がる境界領域を生涯にわたって探究してきた画家の歩みを示す構成としました。

休催日
日・月・祝日休廊
展覧会ホームページ
https://www.wako-art.jp/exhibitions/raouldekeyser-return/

イベント情報

オープニング・レセプション
11月8日(土)17:00-19:00

会場情報

ワコウ・ワークス・オブ・アート ワコウ・ワークス・オブ・アート

WAKO WORKS OF ART

会場住所
〒106-0032
港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F
ホームページ
https://www.wako-art.jp/
更新日:2025年12月16日
登録日:2025年12月16日