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Painterliness(ペインタリネス) 2017 Painterliness 2017
石川裕敏 圓城寺繁誉 河合美和 岸本吉弘 善住芳枝 中島一平 渡辺信明 【テキスト 尾崎信一郎】
会場
ギャラリー白 ギャラリー白3
Gallery HAKU
会期
2017.8.28(mon)-9.9(sat)
展覧会概要
Painterliness(ペインタリネス) 2017 ペインタリネス 2017 石川裕敏 圓城寺繁誉 河合美和 岸本吉弘 善住芳枝 中島一平 渡辺信明 【テキスト 尾崎信一郎】
Painterliness 2017
「ペインタリネス」の力 尾崎信一郎
今回で19回目となる「ペインタリネス」を開催する。出品作家は昨年と同じ7名。もはや中堅というよりヴェテランの画家たちである。出品者の選定はギャラリーによるとはいえ、
このグループ展は時に出品作家を違えながらも常に8名程度の作家で構成され、ゆるやかな変遷を遂げてきた。見慣れた作風の中に時に思いがけない展開があり、四半世紀に近い時の流れの中にあって私はいつも会場へ足を運ぶことを楽しみにしてきた。今回の出品者のうち三名は1995年の第一回展にも出品しており、ほかの作家も初期からの常連といってよい。むろん時の経過は非情でもある。私は亡き二人の同志、初回からの出品者であり夭折した館勝生、展覧会を支えたギャラリーオーナー、鳥山健に思いを巡らすことなく、この展覧会に向かうことはできない。彼らが永らえていたら、展示から何を感じるだろうかという思いは毎回、私の胸を去来する。
さて、今年の春、私は豊田で興味深い展覧会を見た。美術家岡崎乾二郎によって企画され「抽象の力」と題された展示の冒頭で岡崎は次のように宣言する。「キュビスム以降の芸術展開の核心にあったのは唯物論である。すなわち物質、事物は知覚をとびこえて直接、精神に働きかける。その具体性、直接性こそ抽象芸術が追究してきたものだった。アヴァンギャルド芸術の最大の武器は、抽象芸術の持つ、この具体的な力であった」かかる簡潔な言明に「ペインタリネス」に連なる私たちも共感を覚えるのではないだろうか。抽象芸術が具体的であるという逆説はモダニズムの絵画の本質と関わっているように思われる。石川裕敏による光の粒子のごとき点描、渡辺信明のポジとネガが反転する筆触は、まず絵画という物質として私たちの前に提示される。本展の出品作家の誰もが絵画が物質の層として成立しているという端的な事実から出発していることは明らかである。
「ペインタリネス」を具体的な物質が宿す抽象性として再定義することはできないだろうか。絵画は物質、具体的には絵具やカンヴァスといった素材をとおして受肉される。しかし素材としての事物性からいかなる飛躍を遂げるかという点こそが、私たちの絵画がめざすところであり、かかる飛躍はピート・モンドリアンにおいては純粋な造形性、バーネット・ニューマンにおいては崇高、モーリス・ルイスにおいては現在性という名を与えられた。なぜ私たちはこのような境地をめざさなければならないのか。それはこの飛躍がただ絵画という媒体においてのみ成立しうるからであり、この点において私たちはなおモダニズムの軛の下にある。かつてドナルド・ジャッドは三次元こそが現実の空間であるとして、絵画という所与の前提からの脱却を自らに課したが、事実は逆であろう。崇高や現在性といった私たちの精神とも関わる抽象的な「力」が絵画という制度化された平面に宿る奇跡こそが問題とされなければならない。注意すべきはこのような奇跡は必ずしも抽象表現を前提としないことだ。フェルメールでもよい、モネでもよい、私たちが優れた作品の前で感じる圧倒的なセンセーションはそれが何かに似ているから生じたのではない。物質という場に精神性が立ち現れる奇跡に際会したからである。この意味において「抽象のカ」の中に岸田劉生や熊谷守一の「具象的」な絵画が配置されていたことは何の不思議もない。
今、モダニズムという言葉を引いた。モダニズムの終焉、ポスト・モダンの到来が喧伝されてから既に30年以上の時が経つ。しかし振り返るに、絵画の領域においてそこでなんらかの評価すべき成果があっただろうか。最近、大阪で私はあるアート・フェアを訪れ、出品された絵画の質の低さに愕然とした。フェアであるから本来的に売り絵であることは措くにせよ、多くの若い作家たちが時流に迎合したくだらない絵画を描いて事足れりとしている状況に暗然たる思いを抱く。売れさえすればよい、かかるシニシズムの瀰漫は現在の政権のもとで横行する不正義と拝金と無関係ではなかろう。しかし私たちが絵画を描く、そして見ることの根源とは先に述べた通り、絵画のみを通して実現可能なカの場、物質が精神を鼓舞する奇跡に立ち会うことであったはずだ。「ペインタリネス」の画家たちの堅牢な画面、横溢するストローク、物語を拒む晦渋はそのために導入されている。
限りなく頽落していく時代に抗するために、まさに今、「ペインタリネス」というが求められている。 (おさき・しんいちろう 鳥取県立博物館副館長)
- 休催日
- 日曜日休廊
- 開催時間
- 11:00a.m. ~ 7:00p.m.
- 土曜日5:00p.m.まで
イベント情報
◇ギャラリー・トーク◇
8.28(mon)6:00p.m.- 尾崎信一郎氏+出品作家
会場情報
ギャラリー白 ギャラリー白3 ギャラリーハク
Gallery HAKU
- 会場住所
-
〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル2F - ホームページ
- http://galleryhaku.com/
- 問い合わせ先
- 06-6363-0493 art@galleryhaku.com
登録日:2017年8月22日