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髙石 晃「シャンポリオンのような人」 Akira Takaishi "Someone like Champollion"

会場

児玉画廊 | 東京

KodamaGallery | Tokyo

会期

2013年8月24日―9月28日

展覧会概要

髙石 晃「シャンポリオンのような人」 タカイシ アキラ「シャンポリオンノヨウナヒト」

Akira Takaishi "Someone like Champollion"

児玉画廊では、昨年 ignore your perspective 15―ノヴァーリス「青い花」について―(児玉画廊|東京)、本年3月の ignore your perspective 18「Fascinating Analysis」(児玉画廊|京都)と、これまで2度のグループショーにおいて髙石を紹介致しました。そして今回の児玉画廊における初個展は、2008年トーキョーワンダーサイト本郷での個展「RISE/SET」以来、満を持しての本格的な新作発表となります。髙石の作品の特徴である、油彩の厚みを肌で感じさせるような剛健な筆触が作り出すやや荒いマチエール、遠近感や空間性を強引に屈折させたような錯視的な構図、一瞥しただけでは意味を読み取る事ができない不可解で謎めいたモチーフ、それらによって見る者の心は好奇な夢想にざわつきます。
「夢の中の、そこでだけ通じている文字や言語、あるいは夢の後味のようなもの。」自身の作品を指した髙石のこの表現は、我々が髙石の作品を見るにあたっての手がかりになります。目覚めてしまえば全く不条理なことでも、夢の中ではあたかも道理にかなっているが如く、人は空を飛び、聞き慣れぬ言語を発し、時間と空間は自由に伸縮します。しかし、ここで髙石の言っている夢の例えの本意は、現実世界と乖離した現象それ自体にではなく、その非現実的な現象が可能となる「夢」という特殊な舞台にあります。髙石の絵画において、キャンバスはある種の「夢」のごときプラットフォームとして様々な現象をその上で巻き起こし、髙石はその舞台上で謎めいたモチーフを投げかけ、さぁどうぞ解読して下さい、と言わんばかりに迫ります。
髙石の近作には、特徴的に紐状のモチーフが描かれています。それは子供の悪戯書きのような必然性の無い線が、絵の中に忽然と現れているように見えます。階段や部屋の内部のような具体性のある空間を意識した描写の中で、紐は意識的に切り離されたような描き方をされているために、それはあまりにも唐突で、見る者の思考を一時停止させます。しかし、それをしてなお見続けていると、この紐の二次元上のうねりが、逆説的に絵画の空間性を表出させているのだと気付きます。空間と紐の描写の間にある断絶が、何かの拍子に同一の空間に存在するものとしてオーバーラップし、紐があたかも階段の奥から伸び上がってきているように、あるいは、部屋の内部を跳ね回るボールの軌跡のように縦横無尽な動きを見せ始めるのです。一枚の絵画の中に存在する、階段、紐、くしゃくしゃにされた紙、などのモチーフは、雑然としていながらも何かを暗示するようで、それに惹かれるままに目を彷徨わせているうちに、困難な知恵の輪が嘘のようにするりと解けるようにして、画面の中の現象に自分の感覚が融和していくのが感じられます。すると、空間が絵画の平面性を貫いて、髙石の絵の中にある非現実的な世界が現実の空間に滲み出して、壁に掛かったただの絵画ではなく、そこにある(仮想的であったとしても)世界への扉としてあんぐりと口を開けているように思えてきます。
ヘンリー・デイビッド・ソローが著書「森の生活」の中で、植物の葉脈が葉の形状を成すある種のパターンとなっていて、それは人間で言えば内蔵と人の外形の関係であり、万物にはそうした密やかなパターンがあって、シャンポリオン(ヒエログリフの解読者)のような人がその自然の隠されたパターンを解読することによって自然の真理に触れるのだ、という主旨の言説を残しています。髙石にとって自身の作品も同様に、描くと言う行為が自身の内面に噴出するイメージを解読するための行為であり、そして髙石自身が一度読み解いたそれは独自の「夢の中の文字/言語」として絵画面というプラットフォームに収められ再び秘匿されるのです。髙石の作品を前に、我々はシャンポリオンのような人であらねばなりません。
今回の個展では、ペインティングとドローイング作品を何かを暗示するように織り交ぜた構成となっており、展示空間そのものが未解読言語に挑むような好奇心に満ちた髙石の世界観の延長として表現されます。髙石の「夢の後味」を、ぜひお楽しみください。

休催日
日・月・祝
開催時間
11時 ~ 19時

イベント情報

オープニング:8月24日午後6時より

会場情報

児玉画廊 | 東京 コダマガロウ | トウキョウ

KodamaGallery | Tokyo

会場住所
〒108-0072
港区白金3-1-15
ホームページ
http://www.kodamagallery.com/
更新日:2013年9月24日
登録日:2013年9月24日