ID:36976

杉本圭助 Keisuke Sugimoto

「不自然の状態」

〝artificial conditions"

会場

児玉画廊

Kodama Gallery | Kyoto

会期

2013年2月16日 - 3月23日

展覧会概要

杉本圭助 スギモトケイスケ 「不自然の状態」

Keisuke Sugimoto 〝artificial conditions"

児玉画廊|京都では2月16日より3月23日まで杉本圭助個展「不自然の状態」を下記の通り開催する運びとなりました。
2011年、個展Kodama Gallery Project 27「rules」で始めて紹介して以来、児玉画廊では東京/京都でのグループショーなどを経て、昨年には2度目となるKodama Gallery Projectでの個展「無機の儀礼」を開催するなど、コンスタントに取り上げて参りました。杉本は2008年神戸大学建築学科を卒業し、平面、立体、パフォーマンスを主として総合的に空間構成を行う作家として在学中より活動を続けています。
杉本の作品における根本的なテーマとして人間に対する概念的な定義の構築があります。ひとえに「人間」と言えども、生物学的に、あるいは存在論的に、社会学的に様々な視点からありとあらゆる捉え方ができます。我々自らが「人間」であるにも関わらず、それが何であるかを明確に述べる事は困難を極めます。「一番最初に何を描きたいかと思ったら、人間が描きたいと思った」という作家の言葉に見えるように、世界のありとあらゆる事象を除いて、ただ「人間」というものに杉本の興味は向いています。
杉本によれば、「人間」は「理論と公式」であると言います。生き、栄えるために知識を得て、新たな学問を生み出し、技術の発展とともに生活様態を革新させてきたこれまでの歩みは、常に新しい「理論」の発見とそれを「公式」化して、また更なる「理論」を生む、、、この繰り返しである、というのが杉本の出した仮定です。その際限のない繰り返しの「軌跡」にこそ「人間」の何たるかを見いだす糸口があるだろう、という、「理論」「公式」「軌跡(痕跡)」を根拠にし、それをなぞるようにして得られたものであるという点を踏まえて杉本作品に対峙すると、自ずとその世界観に触れることができます。
杉本のストリートドローイングや平面作品によく見られる、線描で丸と棒を延々と数珠を描くように繋いでいくモチーフや、細かい線描を重ねて面を構成していく描画手法などは、杉本の言う「理論」と「公式」の繰り返しを体現するものであると言えます。また、今回出品される新作にもいくつかありますが、杉本の作品では皮革を使用したものが多く見られます。皮革とは加工された動物の皮ですが、つまり、ここでは生命の「痕跡」として象徴的に扱われています。経年変化で色合いが変わったり、歪んだり、死してなお移ろうその様子は、杉本にとって「人間」の、もっと言えば生命そのものを縮小した断片となっているのです。このようにしてみると、これら平面的な作品はいずれも、杉本の「人間」に対する認識、つまり「理論」「公式」を生み出し続けることの隠喩であり、それを追体験することによって得られる杉本独自の解釈の場として割り当てられていると言えるでしょう。対して、立体造形やパフォーマンスは、平面的な作品を含めたーつの包括的空間を創出するにあたって、特殊なシチュエーションを作り出す起点あるいは器としての役割を果たしています。立体作品は、彫刻的でありつつ、建築物のような構造体としても捉えられる両義性を有しています。布や木材を組み合わせ、骨と皮のような有機的なイメージと階段や柱のような建造物的なイメージが同居し、その抜け殻のような佇まいは何とも空虚なものを感じさせます。杉本の言う「軌跡」というものが変化や進化を引き換えに搾りかすを残して通り過ぎていった後のようでもあり、見る者はそれを何と理解するべきでしょうか。そして、個展の際に必ず行われる「Chanting」というパフォーマンスは、杉本が最終的に展示空間内である行為をすることによって起こる状況の変化やその結果をもって、空間内の全ての要素を総括するためのものとして行われます。よくあるパフォーマンスや舞踏のようなものではなく、あくまで展示空間にある特定の状況を生み出すためのシステムあるいは設計図面のようなものと捉えるべきでしょう。
「Chanting」(詠唱、転じて単調な繰り返し)という語意からも、それが杉本の根底にあるテーマである「人間」の繰り返す「理論と公式」の「軌跡」にもつながっていくことが分かります。
「実体はないが痕跡のような表現をすることで、人間の残り香を辿る。」この一言に杉本の世界観が集約されているように思います。確かに杉本の作品および展示空間そのものには、言いすぎた言い方をすれば実体を感じないかもしれません。具体性のあるイメージは極端に少ない代わりに象徴性に溢れ、まるで難解な暗号文か数式を突きつけられたように思えます。しかし、作品と対峙していく中で、行為とイメージの向こう側に杉本が見出だそうとしている「人間」の本質に、俄に近づく事があるかもしれません。

休催日
日・月・祝
開催時間
11時 ~ 19時
展覧会ホームページ
http://www.kodamagallery.com/sugimoto201302/index.html

イベント情報

オープニング:2月16日(土)18時より
パフォーマンス:chanting 12「ヤングオーディション」
2月16日(土)19時30分開演

会場情報

児玉画廊 コダマガロウ

Kodama Gallery | Kyoto

会場住所
〒601-8025
京都市南区東九条柳下町67-2
ホームページ
http://www.kodamagallery.com/
更新日:2013年3月13日
登録日:2013年1月15日