大正の半ばから東京においてゆかたを染める注染とよばれる技法が取り入れられるようになります。それまでの江戸時代以来の伝統をもつ長板中形(中形は、中型とも書き、ゆかたの別称)とよばれる型染技法にとってかわります。
注染は近代染色工業の発展に支えられた大量生産にふさわしい技法です。しかし、その模様のもつ表情の豊かさは、近代の庶民の日常の衣料文化をそのままに表しています。さまざまな模様をもつ型の微細な模様を彫る技術もまた伝統的な職人たちによって支えられており、また注染の技法は近代の職人技術によって裏付けされています。
手ぬぐいの染めにはゆかたより早く明治期に注染が導入されます。今回展示するものは、約250枚の中から20枚ほど選びました。いずれも昭和の戦後のものです。
本展において展示する型紙は昭和期のものが中心となりますが、この時期の衣料文化をかいまみることができます。
今回の展覧会に展示する資料は、東京の染色工場に勤務されていた松岡秀哲さん(東大沼町)が収集されたものです。