ポール・デルヴォー(1897~1994)とルネ・マグリット(1898~1967)は二人ともベルギーの画家です。生まれた年も一年しか違わず、同じ時期にアカデミーに通い、共にシュルレアリスムの作家の一人とみなされています。表面的には何かと共通点の多い二人ですが、作風はまるで対照的です。古代風の建築物を背景に、目を大きく見開いた裸女がさまよう、白昼夢のような妖しい世界を描いたデヴォー。りんご、青空、岩、帽子など、それぞれは現実に存在するもの、現実にはありえない組み合わせで描き、不可思議な中にも爽やかさが漂う世界を描いたマグリット。デルヴォーの作品が月あかりとランプに照らされた夜の世界なら、マグリットの作品は雲の浮かぶ青空の世界。どちらとも幻想的である点は共通していますが、作家としての体質は大きく異なっています。この資質の違いは、デルヴォーがもともとは印象主義や表現主義から出発しているのに対して、マグリットが抽象絵画から出発していることとも関係していると思われます。このたびの展覧会では、姫路市立美術館の所蔵品から、この二人の巨匠の作品を選び展示いたします。また同時に彼らを教えたアカデミーの先生や、影響を与えた画家たちの作品を合わせて展示し、彼らの作品の根源に迫ります。