「風景は人が発見するものだ。人が発見しなければ風景は存在しないという意味では、人が創作するものだといってもよいかも知れない。山や川がそこにあれば、そこに風景があるかのように考えては間違いだろう。それを一つの美しい眺めとして発見しない限り、その山も、その川も、ただ地球の表面のでこぼこの一種にすぎない」と棟方志功は語っています。
棟方志功は、訪れた先々で目にした風景を描いたことはあっても、風景画を描くためにスケッチ旅行をすることは殆どありませんでした。
そのような棟方が「片雲の風にさそわれて漂泊の思いやまず」と旅立った先人のような心境になったのでしょうか。還暦を迎える頃から風景画制作のために日本各地を訪れ、時を惜しむかのように動き回り、板画や油絵など膨大な作品群を遺していきました。
このたびの特別展では、東海道を皮切りに四国、九州、東北と巡った棟方志功の眼差しに捉えられ、切り取られた海道の風景のうち、その端緒となった《東海道棟方板画》、芭蕉の足跡を辿った《奥海道棟方板画》《羽海道棟方板画》の全シリーズを展示し、棟方の足跡を辿ります。
また、本展では特別出品として、馬頭町広重美術館所蔵の歌川広重作《東海道五拾三次》を展示し、画家による視点の違いをご覧いただけます。