マルク・シャガール(1887-1985)は、故郷白ロシアのヴィテブスクよりパリへ留学し、キュビスムやフォーヴィスムなどの前衛美術を批判しつつも吸収します。その後、ユダヤ人迫害や戦火から逃れてニューヨークへ渡り、後年は南仏で過ごすなど活動の拠点を次々と変えた作家です。この間、多くの絵画、版画、ステンドグラス、陶器、詩作など多様な作品を完成させますが、常に故郷のヴィテブスクと最愛の妻ベラ・ローゼンフェルドを含めた女性たちの存在が重要な位置を占めていました。
本展では、永遠の霊感源となった故郷や女性への愛に注目し、作家シャガールの人生がどのように作品に投影され、変化していったかを’愛の軌跡’として捉えます。油彩絵画34点を含めた70余点の作品郡を通して、没後20年にあたる今日においても私たちの眼を絶えず惹きつけてやまないシャガール神話を新たな気持ちで辿っていただければ幸いです。