創作折り紙作家・吉澤章は1955年に初めての海外個展を、オランダのアムステルダム市立美術館で開催しました。当時44歳で、最も創作意欲にあふれた時期の作品300点が展示され、またたく間にヨーロッパ中の注目を集め、画期的な造形美術“ORIGAMI”として名声を確立されました。以後、世界各地で展覧会が開催されましたが、1959年、ニューヨークの展示の際に作品がなくなるというハプニングが起こったのです。
もちろん、手を尽くして探したものの、作品の行方はわかぬままとなっていました。それが半世紀を経た昨年、その作品の一部が見つかり、吉澤氏のもとに還ってきたのです。これらの作品に氏が再会できたのは本当に幸運でした。というのは、今年3月、奇しくも94歳の誕生日に亡くったからです。
吉澤氏は一枚の紙で、はさみやのりを一切使わず、動植物から自画像までを立体的に表現するという新技術を確立され、ORIGAMIとして世界に通用する芸術に高めました。
この企画展では、還ってきた作品を含めて、吉澤章の創作の原点から現代までの代表的な作品を一堂に展示します。