漆黒の闇の中よりそっと浮かび上がる儚げな蠢く者達。そこに手を差し伸べて触れてみようとすれば、崩れ去るか、遠い彼方に引きずり込まれてしまいそうな佇まいが秀島作品にはある。人類が共有する記憶の彼方へと誘うようなその吸引力は、いつ、どこで、だれによって我々の内に擦り込まれたものなのだろうか?
1934年熊本県水俣市に生まれた秀島由己男は1966年の個展デビュー以来、ペン画からメゾチントを主とした銅版画へと移行し、近年は写真映像を巧みに取り込んだ作品をも数多く制作しています。
初期の“霊歌”“わらべうた”、石牟礼道子との詩画集“彼岸花”、安永蕗子との歌画集“蝶紋”、高橋睦郎との詩画集“静物考”“われらにさきかけてきたりしもの”他、90年代までの近作から約40点展示致します。