武田五一(1872~1938)は、明治後期から昭和初期にかけて活躍した日本を代表する建築家のひとりです。アール・ヌーヴォーをいちはやく日本に紹介した人物として広く知られますが、その関心は伝統的な日本建築にもおよび、数多くの多彩な建築作品を生み出しました。その一方で、教育者としても多くの建築家を世に送り出し、さらには文化財保護への貢献や、染織・陶芸・家具といった工芸分野にも才能を発揮するなど、建築設計にとどまらない幅広い仕事に腕をふるいました。あくまでもその活動の中心は関西にありましたが、東京とのかかわりに着目したとき、若き日に研鑽を積んだ東京帝国大学、生活の舞台となった西片、そして本郷に求道会館と求道学舎という傑作を残すなど、文京区とのゆかりの深さを発見することができます。今回の特別展では、おもに東京における軌跡をたどりながら、マルチアーキテクト・武田五一を紹介します。