浦島太郎の物語は、桃太郎や金太郎等とともに、もっとも親しまれる物語の一つであり、全国各地でさまざまな浦島太郎が語られています。そして横浜市にも、浦島太郎の物語が浦島観音三尊とともに伝えられています。
かつて横浜市神奈川区には観福寺(観福寿寺)という寺院が存在し、浦島寺と呼ばれて多くの信仰を集めていました。一般に知られる浦島太郎の物語は、竜宮城から持ち帰った玉手箱を開くと老人になってしまうというものですが、横浜の浦島寺に伝わる数種類の縁起の一つによれば、横浜の浦島太郎は竜宮城から観音像を持ち帰り、玉手箱は開けずに、乙姫とともに永遠に人々の守護神になるとされているのです。
本展では、よこはまの浦島太郎の物語について、その初見から現在までを浦島寺の歴史とともに紹介します。また古代・中世にさかのぼる一般の浦島太郎の物語の歴史も、文学や芸能に視点を据えて玉手箱・絵巻物・竜宮域・草双紙などから解説していきます。