従軍、シベリア抑留、壮絶な体験を超えて
自己を見つめ続ける宮崎芸術の過去=現在
1922(大正11)年、周南市に生まれた宮崎進(みやざき・しん)は、1942(昭和17)年に応召、3年間の従軍と4年間にわたるシベリア抑留の後に引き揚げ、本格的に画家としての活動を開始します。放浪する芸人に同行した経験から制作された「旅芸人シリーズ」で注目を浴び、1967(昭和42)年には《見世物芸人》で第10回安井曾太郎記念賞を受賞、以後も、ヨーロッパ滞在を経て精力的に制作を続け、背景と一体化した人物描写による作品や、抽象化された形態に麻布を貼り付け激しいタッチで彩色された作品、さらには彫刻作品も展示しています。
シベリアでの体験にあらためて取り組んだ作品は特に高い評価を得ており、2004(平成16)年、サンパウロ・ビエンナーレ日本代表に選ばれるなど83歳になる現在も旺盛な制作活動を続けています。その作品は、言語を絶する過酷な体験をひとつのきっかけに、徹底的に自身の生きる意味を問い続けるものといえます。近作においては、生命や自然へとテーマはさらに深みを増していますが、歴史に翻弄されながらも自己を見つめ続け、生きる喜びや存在の意味へと至ったその軌跡をたどることは、戦後60年の現在、われわれ自身が生きる意味を問いなおす際大きな示唆を与えるものと思われます。
本展では、開館10周年記念事業として、当館所蔵の作品を中心に、安井賞受賞作、国内初公開となるサンパウロ・ビエンナーレ出品作を含む96点の作を展観し、その画業を振り返ります。