今年(生成17年)は、戦後60年の節目の年にあたります。先の大戦では、全世界で4000万~5000万もの人々が亡くなりました。幾多の若い生命が戦地にかり出され、戦場に無念の死をとげました。その中には、絵をこころざし、その思い半ばに命を失った多くの画学生がいます。
戦没画学生慰霊美術館「無言館」(長野県上田市、窪島誠一郎館主)は、そうした学生たちが遺した作品と遺品を集めて、平成9年に開館した美術館です。父母の慈しみ、妻や兄弟姉妹の愛情、友との絆、郷里の山河の記憶…、無言館が収蔵する作品には、絵を描く情熱と戦争に赴く覚悟のはざまで、ひたむきな生を完結して死を受け入れるまでの限られた時間が、凝縮して刻まれています。