心地よく柔らかい風を生みだす「せんす(扇子)」と「うちわ(団扇)」。扇風機やエアコンなどで簡単に空調ができる現代でも、風を送る実用品としての役目はもとより、涼をよぶ夏の風物詩として欠かせないものとなっています。共にその歴史は古く、絵巻や浮世絵などにも多く描かれました。
「せんす」は、日本で発明されたといわれています。平安時代の初めに薄いヒノキの板を重ねた檜(ひ)扇(おうぎ)ができましたが、後に紙の扇ができて、軽くて扱いやすかったためにこちらが主流となり、和歌を記したもの、肉筆や版画などで絵を描いたもの、金銀の箔を散らしたものなど様々な趣向をこらしたものがつくられました。後に中国に伝わり、さらにヨーロッパまで広がって貴族の装飾品としても愛用されました。
「うちわ」は、古代中国で用いられていたものが奈良時代頃に日本に伝わり、はじめは貴族や僧侶に愛用されました。庶民の間に普及したのは江戸時代以降で、竹骨に和紙を貼ったうちわは、生活用具として欠かせないものとなりました。日本各地で様々なうちわがつくられ、伝統工芸品として現在まで続いているところもあります。
使われ方も様々で、あおいで風を送る以外に、儀礼用や服飾品、美術工芸品、贈答品や広告・宣伝用など幅広い用途があります。最近では広告用に、プラスチックの骨に布やビニールを貼ったものが多くなっていますが、昔ながらの紙製の「せんす」や「うちわ」は、粋で風情のあるものとしてまだまだ多くの人たちに愛用されています。また、着物や浴衣の流行で、おしゃれな小物としてこれらを持つ人も増えてきたように思います。
展示には、いろいろな大きさ・形・模様の「せんす」と「うちわ」が登場しますので、楽しみながらそれぞれの歴史やつくり方などをわかりやすく学ぶことができます。また、風を送って遊ぶおもちゃなどもご紹介します。展示室内で江戸時代に考案された「うちわ車」を実際に試していただくこともできます!
また、いろいろなうちわがあるけれど、自分だけのうちわが欲しい!という方には、8月13日(土)に「オリジナルうちわづくり」の教室もありますので、世界にたった1枚の〝マイうちわ〟づくりを楽しむことができます。
省エネ、地球温暖化などに関心が高まっている今、改めて‘せんす’や‘うちわ’をもう一度見直し、自分好みの涼しさを探してみてはいか・・・