江戸時代中期に京都で活躍した伊藤若冲は、大胆にして精緻な画家により奇想の画家として近年注目されています。身近な動植物を主な題材とし、ユーモアと機知たっぷりに描くその明快奇抜な画面は、現代の我々の眼にも新鮮で、古くささや難解さを少しも感じさせません。特に自宅で飼いながら描いた鶏図は、様々な姿態を自由自在にとらえ、今にも動き出しそうな迫真の描写力を見せています。一方琳派は、近世初期の俵屋宗達を創始とし、京都や江戸を舞台に尾形光琳、酒井抱一、鈴木基一などへと受け継がれた華やかで装飾性あふれる作風で知られています。四季の変化による多彩な自然美をこよなく愛し、それと寄り添いながら生きようとする日本人特有の感性。その豊かな美意識によって育まれた麗しき世界は海外においても人気が高く、まさに日本の絵画を代表する分野といえるでしょう。
今回は、京都市左京区にある細見美術館が所蔵する若冲と琳派の珠玉のコレクション約60点を、釘隠や襖の引手などに使用された七宝(工芸)の優品約40点と併せて展示いたします。江戸時代に燦然と輝いた日本美の粋をお楽しみください。
※会期中一部の作品を展示替いたします。