産業革命の成果で近代化が進むフランスの19世紀半ば、都会の喧騒を離れ、自然と直接向き合って制作しようとする画家たちがいました。パリ郊外のフォンテーヌブローの森近くの小村バルビゾンには、フランス近代風景画の展開に重要な役割を果たしたコローをはじめ、後にバルビゾン派の画家として知られることになるルソーやミレーなど数多くの画家たちが集い、森や田園などの自然風景や働く農民を描きました。
徹底した自然観察と自然への崇敬の念に基づき、写実的な手法で描かれた作品は、当時の官展(サロン)で主流であった理想化された風景画とは異なる、新しい風景画として注目され、後の印象はの画家や日本の近代洋画家にも影響を与えました。
今回の展覧会では、国内のバルビゾン派の個人コレクションとしては最も充実したものとして知られる、中村武夫氏(姫路市在住の実業家)のコレクションから、ミレー22点、コロー19点を中心に、「バルビゾンの七星」と呼ばれるディアズ、トロワイヨン、デュプレ、ルソー、ドービニー、ジャック、写実主義の巨匠クールベなど、31作家による109点の優品を紹介します。
本展は彼らの絵画世界を堪能する機会になるだけでなく、自然との共生が課題とされる現代において、自然と人間とのあり方について深く考える機会にもなることでしょう。