ポール・デルヴォー(1897-1994)は、ベルギーのシュールレアリスム(超現実主義)を代表する画家です。人形のように無表情な裸婦たち、ギリシャ風の神殿、汽車や駅、港。これらのモチーフが織りなす神秘的な作品は、私たちを夢と幻想の世界に誘います。一方で、デルヴォーは家族、友人、知人たちなど身近な人々の肖像画やデッサンも数多く残しました。対象の本質をとらえる鋭敏な観察力と繊細で的確な描写力で描き出された人物たちは、私たちの心を知らず識らずのうちに惹きつける、不思議な魅力をそなえています。画家はこうした日常的なイメージをインスピレーションの源として、どこかにありそうなでどこにもない静寂に包まれた世界を創り出しました。
本展では、デルヴォー財団の協力のもとに、約80点の素描と油彩画を展観し、画家の創造の本質に迫ります。