東京都現代美術館では、常設展の新たな試みとして、常設展示企画「アルス・ノーヴァ-現代美術と工芸のはざまに」展を開催いたします。本展は”工芸と現代美術”という二つのジャンルの垣根を越えて、互いの新たな潜在的可能性を見出そうとするものです。当館の収蔵作品に加え、館外より18点の作品を借用し構成されています。
美術と工芸。古来より工芸というジャンルは、美術の枠組みから外れたものとして位置付けられてきました。いうなれば、工芸は美術と生活の中間的なジャンル、技法の複合体です。又、美術の歴史の中で、工芸とは純粋な美術の形成過程とは別の流れにより形成されてきたと考えられてきました。
このように工芸を美術の枠組みから押しやり、位置づけてきたのはモダニズムの思想でした。純粋性と自律性を目指し、モダニズムは様々な技法を疎外し、ジャンルの体系を確立してきました。以後、工芸は近代を通じて美術とは区別するものとなります。しかし、現在、モダニズムを再考する動きが強まる中で、工芸に関しても、又見つめ直す時期に来ているといえます。
かくして美術は枠組みから外される様々なものを生み出してきました。絵画や彫刻によって代表される美術は、工芸という中間地帯を介して工業と関わり、又そのことにより独自の領域を確保してきたのです。
工芸と美術というジャンルを越えた作品を既存の概念にとらわれること無く、新たな視点で見つめ直し、相互の潜在的可能性を探ることに本展のねらいはあります。又、それは、あらたな美術・工芸の観点を我々に導いてくれることでしょう。
※「アルス・ノーヴァ」=新しき技 という命名はジャンルとしての自立を決して志向するものではありません。