河原温は、カンヴァスに制作当日の日付のみを描く<デイト・ペインティング>の連作、“Today”シリーズによって国際的に知られる作家です。彼自身の生存の証として、1966年から継続されてきたこのシリーズは、今日という時の重みや、普遍的と思いがちな時間がはかないものであることを改めて意識させます。極めてストイックでありながら、人間存在そのものへの思索を促すこの作品によって、河原はヨーロッパやアメリカの美術界に大きな影響を与えてきました。
本展覧会は、“Today”シリーズ《I Am Still Alive》130余点、現在から過去100万年分の西暦と、現在から100万年未来までの西暦の数字を4000頁、計20冊の本に収めた《百万年-過去》《百万年-未来》を展示します。
日常を、描くという行為に凝縮する一方で、100万年という悠久の時間を客体化することによって、自らが生きることを観照する河原温の態度――――私たちの意識の深い次元を呼び覚ます彼の作品は、21世紀の新しいパラダイムを模索するうえで、重要な指針となることでしょう。
「河原温 -意識、瞑想、丘の上の目撃者-」展は、イギリス・バーミンガムにあるアイコン・ギャラリーとフランス・ディジョンのコンソーシアムが企画した国際展です。地球を西から東へ巡るという考えのもと、2002年末からイギリスをかわきりにヨーロッパ、アジアの各国の美術館で開催されてきました。本展覧会の後は、ニュージーランド、中南米を経て、アメリカ・ニューヨークで紹介される予定です。