1913年名古屋に生まれ、昨年他界された木村定三氏は知る人ぞ知る美術収集家でした。愛知県美術館が寄贈を受けた三千点を超える木村コレクションのなかで、熊谷守一の作品は質量ともに傑出しています。熊谷守一(1880-1977)は戦後の画壇や俗世間から離れ、明快な輪郭線と平滑な色面による独自の様式を確立して身の回りの動植物などを描き続けました。昭和13年25歳の木村氏は当時まだ一般にはほとんど知られていなかった58歳の熊谷と出会ってその作品に惚れ込み、その後ふたりの親交は熊谷が97歳で亡くなるまで続きました。この長きにわたる親交を通じて、油彩の代表作はもとより日本画や書、彫刻など200点を超える作品が収集されました。それは熊谷の芸術の奥深さを知ることのできるまたとないコレクションとなっています。本展覧会ではこの木村コレクションの熊谷守一の作品群を未公開作品を含めて一堂にご紹介します。