文学者の手紙は、作品と違い公表することを前提に書かれていないので、人柄や人格がより鮮明に表れます。とくに妻や家族に宛てた手紙は、その人の肉声を聞くがごとく、直に向き合うかのような気持ちにさせます。
妻に対する「あるいは優しく、あるいは心遣いのこまやかな、あるいは葛藤をともなった心情のすがた」、家族に対する「肉親に宛てられたものでしかみられないような、機微にふれ、赤裸々に事実をあきらかにし、あるいは血肉のつながりの強さを教えられる」、愛にあふれた様々な表現がそこにはあります。
本企画展では、「妻へ」では福地桜痴、二葉亭四迷、夏目漱石、有島武郎、大町桂月、芥川龍之介、室生犀星、高見順、加藤道夫、川口松太郎、「家族へ」では森静男、池辺三山、樋口虎之助、萩原朔太郎、石川啄木、岡本かの子、与謝野寛・晶子、里見弴、有島武郎、平戸廉吉、芥川龍之介、長谷川時雨たちの手紙と自筆原稿・愛用品などを紹介します。