60年代に一世を風靡し、今また注目されるポップ・アート。美術界の反逆児としてのポップ・アートの系譜は、戦前のフランスでデュシャンが発表した「レディメイド」まで遡ることができます。日常品をアートとして開き直ったこの革命の萌芽。それを20世紀芸術の一大潮流にまでしたのは、大衆文化と消費社会の国アメリカのアーティストたちでした。
戦後のアメリカ美術の主流は、抽象的でわかりにくい芸術でしたが、それを覆すべく、身近な事物に素材を求めた若者たちが現れました。彼らはハリウッド映画、スーパーマーケットの商品、コミック雑誌などを、わざと芸術のコンテクストに入れ、象牙の塔に揺さぶりをかけたのです。そしてその挑発的な姿勢は、ウォーホルの描いたジュディ・ガーランドの肖像に象徴的に表われているといえましょう。
彼らの仕事は着実に世の中に浸透していきました。さらにそれは逆流し、私たちの日常生活にも入り込んでいき、20世紀末には、こうしたイメージを当たり前のものとして育った第二世代のポップ・アーティストも登場します。一方、ヨーロッパでもポップ・アートは支持されました。そして普通はそう呼ばない作家の作品も、この文脈の中に置くとすんなりと解釈できるくらい、それは「流行」していったのです。
本展はポップ・アートを20世紀芸術の最も重要なファクターととらえ、その全貌を探る意欲的な試みです。出品される80作品は、ポルトガルのシントラ近代美術館所蔵のベラルド・コレクションからのもの。コレクターのベラルド氏の個性も感じられるこれらの作品のほとんどが日本初公開です。