彫刻家父子、保田龍門、春彦の展覧会を開催します。保田龍門(1891―1965)は和歌山県に生まれ、大正から昭和にかけて活躍した洋画家、彫刻家です。日本近代彫刻の主流というべき萩原碌山(守衛)の流れをくむ彫刻家であり、その塑像による女性像は、パリでブールデルやマイヨールに学んだきびしい造形探求が感じられます。油彩作品はクラシックな表現のなかにも大地や生命を描こうとした大正時代の息吹が感じられます。渡欧以後は西洋での研鑚が洗練された構図のなかで表現されています。
保田春彦(大磯町在住、1930―)は、日本の代表的な現代彫刻家のひとりです。1952年に東京美術学校彫刻科を卒業、1958年から10年間にわたるフランス、イタリア留学では、オシップ・ザッキンに師事し、パリ青年美術家ビエンナーレ展などを舞台に出品します。帰国後はサンパウロ・ビエンナーレ展ほか国内外で活躍しています。作品には西洋の古代や中世の美術、エトルスクやロマネスク美術への憧憬が色濃く感じられます。「迷宮のある僧院」に象徴される教会建築の内部(地下)空間や、赤錆の幕舎シリーズの幕舎:Tabernaculum(移動神殿)には、営々と続く人間の生活が投影され、鉄や銅による素材のなかで単純化され、密度の濃い抽象形態へと昇華しています。
本展では、関東では初となる保田龍門、および春彦父子、また春彦に影響を与えた、夫人・彫刻家の故シルヴィア・ミニオ=パルウエルロ・保田の作品をあわせた75点によりその作品を振り返ります。