当館収蔵品より、ジョルジュ・ルオーの版画集「流れる星のサーカス」をご紹介いたします。ルオーは、10代の頃、ステンドグラス職人を続けながら絵画を学んでいました。聖書の場面やキリスト像といった神聖な存在を描く一方、サーカスや娼婦などといった人々の姿を描き続けています。
太く力強い輪郭線と重厚な色彩が特徴であり、中世のステンドグラスを思わせます。
「流れる星のサーカス」は、1930年に刊行された版画集「サーカス」に続いて出版された作品です。この頃は、サーカスに特に関心を持っていた時期であり、夢や孤独を表現するテーマとなったのです。貧しい大道芸人が、舞台を華やかに演出するサーカスに登場する人々を、ルオーは聖書に登場する人物と同等に扱って描いています。
存在感があり、力強く描かれたサーカスの人々。画家の、作品へ込められた思いを感じていただければと思います。