戦後、さかんとなったいわゆる「オブジェ」の登場は、工芸に、造形芸術の広い視野において検証される契機をもたらしました。これにより「用途」という拘束から工芸は解き放たれ、自由な創造を保障する安全圏に送り込まれたかのようにみえました。
はたしてオブジェは工芸のひとつの終着点だったのでしょうか。
今回ご紹介する11人の作品は、いずれもすっきりとしていて軽く、そしてどこかプラスティックな印象をもたらします。ガラス、陶磁、染織と向き合う素材・技法は異なりますが、求められる形態やテクスチャーは、工芸制作のプロセスに重ね合わせた作家個々の感性や思考の軸跡として提示されています。その軽やかさは、さらなる高みへ飛躍しようとする意志の表出であり、薄さや透明感は、ものの核心に迫ろうとするまなざしが探り出した造形言語なのです。そこでは、かつての前衛的なオブジェ制作のうちに展開された詩情や隠喩、苦闘の影のようなものはほとんどみられません。物質の美しさに嘆じてもそのなかに沈みきることなく、わくわくと掻き立てながら、ある線からはクール。そこに一種のセンスが生まれるのかもしれません。