公刊『月映』は、恩地孝四郎、田中恭吉、藤森静雄の3人による自画・自刻の木版画と詩の同人誌です。機械刷りによる200部限定で1914(大正3)年9月から1915(大正4)年11月まで、計7集が洛陽堂を出版元として刊行されました。創作版画誌として先駆的なもののひとつです。
死におびえ、魂を削るように作品を刻む田中恭吉。彼の絶望を共にかかえることとなった恩地と藤森も、内面や感情の表現を深めてゆきます。やがて、恩地の表現は日本で最初期の抽象表現へと達しました。若者たちの研ぎ澄まされた感性は、100年余を経てなお私たちの心に、強く痛切に響いてきます。