日本刀に優美な反りが形成されたのは、平安時代中期に武士=サムライたちが台頭してきたころと時を同じくします。日本刀は武器であるという性質から各時代の必要に応じて製作されてきました。とくにその変化は姿形にあらわれており、サムライたちの活躍により戦乱と平和を交互に経験しながら、その都度少しずつ変化していきました。
こうした日本刀に変化をもたらした戦乱と平和、その中で一所懸命に生き抜いたサムライたちの生き様は、戦で活躍した状況を知らせる書状だけでなく、生き残ったものによって語り継がれ、その活躍は物語となり、さらに絵巻や屏風に描かれ後世に伝えられました。
また、日本刀そのものにもサムライの記録が残っているものがあります。御刀の持つ部分である茎(なかご)には製作地名と作者名、製作年月日を記載するのが通例で、さらに誰のために製作したのかを記載した「為打(ためうち)」と呼ばれる特別注文品が戦国時代ころから多く作られるようになりました。これらは製作した刀匠とそれを注文した武将との関係を示唆する貴重な金石文です。
さらに日本刀はサムライたちの絆を深める役割も果たしました。戦などの褒美として贈られた御刀はその武将の活躍と共に記録され、現代にまで大切に扱われてきました。
本展は平安時代から現代までの日本刀の時代変遷を軸に、それぞれの信念のもと太平を夢見て時代を、戦場を駆け抜けたサムライたちの様々な栄枯盛衰の記録である「夢の跡」をご紹介いたします。