工芸作家は、素材への深い理解に基づいて、よい素材を選び、さらにそのよさを活かす"わざ"を用いて作品をつくります。竹工芸の場合、漆を塗ったり竹を湾曲させたりすることで光沢をみせたり、他の素材と組み合わせることにより新鮮な印象を創出したりします。また、素材に対して複雑な作業をほどこす"わざ"だけでなく、時には素材の美しさをそのままみせる"わざ"もあります。
生野祥雲斎《白竹一重切花入 くいな笛》は、筒状のままの竹の一部を窓として切り取ったシンプルな作品です。最小限の"わざ"にとどめることで、素材である竹そのものの美しさをみせています。また、この窓を切り取るという、最小限の"わざ"は、シンプルな作品だからこそ、作品の印象を大きく左右する繊細な"わざ"であるといえます。
本展では、竹工芸作品の素材の美しさを最大限に活かすために用いられる、素材の組み合わせ方や"わざ"のほどこし方をお楽しみください。