"Why Have There Been No Great Women Artists?"
「なぜ、偉大な女性芸術家はいなかったのか?」
美術史家・リンダ・ノックリン(1931~2017年、米国)は、1971年に論文「なぜ、偉大な女性芸術家はいなかったのか?」を発表し、女性芸術家をとりまく環境や教育、社会通念といった"構造"を問題にしました。それから、すでに50年が経ちました。
1970~1980年代、それまでの美術史は、欧米の白人男性の視点から編まれてきた偏りのあるものであるという理解のもと、美術史を語りなおそうとする気運が高まってきました。この潮流は「ニューアートヒストリー」と呼ばれ、1990年代に日本にも本格的に取り入れられていきます。このようにこれまでの白人男性中心主義的な美術史の再検討が求められるなかで、女性の芸術家の置かれた社会環境を検討することや、彼女たちの作品を再評価することは、美術史全体にとって意義があります。
本展では、当館のコレクションの中から女性芸術家による作品を紹介します。美術教育の機会が不平等で、さらに良き妻、良き母であることを女性に求める社会の意識も強く、女性が芸術家として活躍することが今よりもさらに難しかった時代から、制作を続け発表してきた彼女たちの活動を、まずは知っていただければ幸いです。