繊細な色のグラデーションで生命のきらめきや儚さを表現する現代美術家 相馬博(1972年-、武蔵野市在住)。初期には具象的な作品を描いていましたが、表現を模索していくうちに、「東京に生まれ育った自分にとって、目に映る風景とは真上に見える青空や雲、太陽、月、夜空の星々だった」という幼い頃から目にしてきた空の光をモチーフとした抽象画へと辿りつきます。何十層にも絵の具を重ねることによって生まれる深みのある色彩と、光の屈折を利用しながら重層な奥行き・広がりを見せる作品は、抽象でありながら、万人共通で思い描く宇宙を浮かび上がらせ、広大な空間の広がりを感じさせます。
また、画面の表面に何度もニスを塗り重ねることにより、漆のような艶と滑らかさといった独特の質感が遺憾なく表現され、そこから出てくる、角度で変わる無限の色味や表情は、自然の強いエネルギーのような目に見えないものの存在を感じさせます。それはまるで、真の価値とは「目に見えない」ところにあるということを暗示しているかのようです。本展では、新作と旧作を合わせて展示します。その変遷をたどることで、深遠な作品世界をより深く、じっくりと堪能していただく機会となれば幸いです。