このたび笠岡市立竹喬美術館では、石川県白山市在住の谷吉雄氏が蒐集した近・現代洋画のコレクションを紹介します。谷氏は「作品から作家の眼差しや人間性を、さらにはその生きた時代の空気までも感受したいと欲し、そこから醸し出される詩情を共感できる絵を求めてきた」といい、その結果、多様な作品がコレクションされました。画家の知名度に関わらず、優れた作品に目を向ける姿勢は、優れた業績を残しながらも埋没した日本画家に目を向ける当館の姿勢と通じるところがあります。
特に、鴨居玲(1928-1985)の作品群はコレクションの特性を端的に表しています。鴨居玲は金沢美術工芸専門学校(現在の金沢美術工芸大学)で宮本三郎(1905-1974)に師事しました。パリやブラジルなど各地へ渡った後、スペインに滞在し、酔っ払いや道化師、老婆などを主題に作品を描きました。また、社会や人間の闇を問い続け、自らの弱さや醜さを表現した自画像を残しました。他にも、戦時中に「新人画会」を結成した松本竣介(1912-1948)、麻生三郎(1913-2000)らの時勢に左右されない眼差し、長谷川利行(1891-1940)、佐分眞(1898-1936)、今西中通(1908-1947)等、夭折の画家など総勢55名による90点の作品をご紹介します。
谷コレクションは、石川県内の博物館や美術館で展示されたことがありましたが、西日本では初めての展覧会となります。この機会にぜひ足をお運びください。